photoessay
#01 4月 麗らか
うららか、うらら、うらうら、うるわしく。
空は晴れ渡り、太陽はのどかに照る。
やわらかな日差しに包まれた春の日、僕は自転車を漕ぐ。
久しぶりに物置からマウンテンバイクを取り出した。
タイヤに空気を入れ、錆びたギアに油を差す。
埃のかぶったサドルを丁寧に拭き、それからのんびりと自転車を漕ぐ。
うららか、うらら、うらうら、うるわしく。
こんなところに花が咲いていたのか。あんなところに小路があったのか。
ゆっくり景色を楽しみながら、自転車を漕ぐ。
うららか、うらら、うらうら、うるわしく。
小高い丘の公園にはいろんな人がいて、
それぞれが勝手にしているからこそ風景ができあがる。
犬を連れて散歩をしているお年寄り、ジョギングに汗をかいている外国人、
バトミントンを楽しんでいる親子、一緒にいるだけでただ楽しい恋人たち。
のどかな風景に僕の心ものんびりする。
うららか、うらら、うらうら、うるわしく。
そう言えば、ある人がこう言っていたのをふと思い出す。
のんびりできるのも才能のうちだと。
うまいことを言う。僕の才能はいかがなものか。
さて、ベンチに座ってひと休み。
僕は上手に僕を生きているだろうか。誰かのために生きているだろうか。
柄にもないことを考えたあとで、
今夜はやっぱり日本酒にしようと思いつき、妙にうきうきする。
うららか、うらら、うらうら、うるわしく。
のんびり、おだやかに、たおやかに、でも強くあることは、
まるで春の日の日差しに似ている。
心も体もうららかでいたいと思う春のまん中。
ああ、春のある国に生まれてよかった。
Copyright (C) 2009 Ryu Sawachi. All Rights Reserved.