essay

だいじょうぶなホームとエクセルなワイン

 このコーナーになんどか書いたが、「だいじょうぶです」という言葉はすっかり市民権を得てしまったようだ。先日、あるスーパーマーケットのレジで「袋はいりますか」と聞かれたので、「結構です」と答えたら「だいじょうぶってことですか」と聞き返された。「結構です」という日本語はもう通じなくなってきているらしい。しかも「結構です」より「だいじょうぶです」のほうがフォーマルらしい。たしかに「結構です」という言葉もむずかしい。いらないときにも使えるし、いいですねと褒めるときにも「結構なお品物ですね」というように使うことができる。それにしてもだ。そんなことも日本はわからなくなってきているのかと思うと、たいへん情けない。思わず「それはいらないっていう意味ですか」とさらに重ねて聞き返しそうになり、ぐっとこらえた。うん、大人の対応だ。えらい。

 ところでここ数年、毎日のように気になるのが、ホームでの電車の待ち方。ほぼ100%ちゃんと並べていない。勘違いしていただきたくないのだが、順番を守れないと言っているのではない。日本人は我先に電車に乗るようなこともしないし、並んでいないわけではない。というより、並んではいる。並んでいるつもりらしい。のだが、しかし、ちゃんと並べないのが不思議でならない。2列とか3列の表示があっても、ほぼ1列にしか並べない。しかもだ。前の人との距離をものすごく空けて並ぶ。間に2、3人は並べるくらいである。全員が全員スマホを見ながら、ボーッとそんな並び方をしている。これ、たぶん日本人の変な遠慮文化なのだろう。個人的な感覚なのでが、特に東京はこういった傾向があるように思う。大阪や名古屋ではあまり感じない。東京は遠慮文化が強いのだろうか。でもだ。非常に迷惑。ホームが歩けなくなるんだ。中途半端にホームが混むんだ。しっかり詰めて並んだほうが、ホームを歩く人の迷惑にならないし、効率的だし、事故も少なくなるはず。というところまでなぜ考えないのかが不思議でならない。だらっと並ぶことの意味を説明してくれる方がいたら、ぜひ教えていただきたい。並んでいるのか、ただ立っているだけなのかわからないような立ち方をしてるときには、思わずわざとらしく「並んでますか」を聞いてしまう。ぐっとこらえられないんだ。あー、大人気ない。

 それにしても、エクセル。日々の仕事のうえでは、たいへんお世話になっているMicrosoftのExcelである。エクセルが悪いのではなく、エクセルを使う人の問題だ。計算もグラフも、表すらもなく、文字しかないのにエクセルを使う人。なぜ。ワードでいいじゃん。そんな資料が多いこと。僕のまわりだけかな。ま、たしかにワードには使いにくさがいろいろある。この件はここでは語らない。エクセルのセルにはめていく便利さもわからなくもない。が、しかし、だからといって、文字だらけの文章をエクセルで作って送ってこないでほしい。と思うのは僕だけだろうか。ま、本人には言わないけどね。うん、大人の対応。

 目上の人にワインを注がれるのが嫌いだ。人数の多い宴会であろうが、数人であろうが、差しつ差されつであろうが、日本人は酒を注ぎ合う。自分のペースで飲みたいし、そのタイミングで注がれるとおいしくなくなるんだよね。なんてこともなくはないが、ま、それは譲ろう。おっとっとっととかって言いながら、冬の寒い日に熱燗を注ぎ合いながら、ちびちびやって愚痴を言い合うのも、またそれはそれでたのし。が、しかしである。ワインだけはやめてほしい。ビールや日本酒と違って、グラスをあげたり、ましてや傾けるようなものではない。かといって、あ、どうもとか言って、そのままテーブルにグラスをおいたまま注がれるのを待つのもなんとも横柄な感じ。何様だよって思われるような気がしてならない。さて、どうしたもんか。ワインはお店の人に任せて、ボトルもって注ぎまわるのだけはやめてほしいんですよね。

 歳を重ねると文句も多くなる。一方、許すことも多くしていかなければならないと思う今日このごろ。そうそう、だいたいのことはどうでもいいことなんですけどね。まだまだ未熟です。

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