essay

やるかやらないか

 珪藻土バスマットをご存知だろうか? その名のとおり珪藻土で作られたバスマットで、たいへん吸水性が高く、人気の商品らしい。石川県金沢市にある工場でつくられているこのマットを、あるテレビ番組で紹介していたことがあった。工場で働く女性従業員が、面倒な手作業をしているのを見て、そこを訪れたタレントが、とてもじゃないけど僕にはそんなことはできないという内容のことを言う。すると、その女性従業員がスパーンと言い放った。
「できないってことないでしょ。やるかやらないかでしょ!」
 がーんっ! 衝撃的だった。確かにそのとおりだ。決して絶対にできない作業だというわけではない。とてもたいへんだけど、面倒くさいだけで、ものすごく難しいというわけではない。気持ちさえあればできる。そうなんだ。できるかできないかではなく、やるかやらないかなんだ。

 東京ヤクルトスワローズの青木宣親選手の対談に同席したことがある。いろいろ勉強になる話のなかで特に印象深かったのが「気持ち」の話だ。
 スポーツではよく気持ちが大事だと言う。気持ちが入ってないから打てないんだ、気持ちが入ってなかったから勝てなかったんだ。もちろん気持ちは大事。でも打てなかった日に、きょうは気持ちが入ってなかったから打てなかっただけだと思ってしまうのはダメだと言う。きちんと技術を分析して、なぜ打てなかったかを考えなければ成長はしないんだと。
 ははぁー、なるほど。これはスポーツだけに当てはまることではない。胸に刺さった。

 われわれはつい、政治に文句を言ったり、日本代表チームに罵声を浴びせたり、会社のグチを言ったりする。多少はいいと思うが、でも、極端な言い方をするとそれは自分がだめだからだとも言える。もし政治が悪いとするならば、それは自分のせい、日本代表が弱いとするならば、それは自分のせい、会社がダメだとするならば、それも自分のせい。ひとりひとりが成長して強くなって考えていれば全体のレベルもあがり、トップのレベルもあがる。ひとのせいばかりにしないで、自分ががんばらなければならない。ま、限度はあるけどね。という話を聞いたことがある。

 というわけで、いい言葉だなあとか、すばらしい考え方だなあと感心しながら、相変わらず呑んでうたた寝している。呑めないってことはないでしょ、呑むか呑まないかでしょっていうなら、話は簡単だんだけどね。 

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