essay

丁寧な日本語

 先日久しぶりにファミレスに行ったら、続々と新しい日本語に出会えた。

「お決まりになりましたころおうかがいします」
 日本語としては間違っていない。が、実際にはなにを注文するか決める時間はひとそれぞれだし、決まったからといって必ずしもメニューを置いてまわりを見回すともかぎらない。決まっているのに店員が来ないことはしょっちゅうだし、決まっていないのに来ることもあるし、なにかほかの言い方はないのだろうかと思ってしまうのは僕だけだろうか。

「ご注文の品はおそろいになりましたでしょうか」
 ご注文の品が主語なのに、なぜそこに敬語を使うのだろう。あるいはご注文の品をそろえるのは店員なのに、なぜここに敬語を使うのだろう?

「15分ほどお待ちになる形になります」
 この「形になる」は以前からいろいろなところで使われているが、かなり気持ち悪い。どこからはじまったフレーズなのだろう?

「すみません、水もらっても大丈夫ですか?」
 これは隣の席の若い男の人が店員に言った言葉。「水をください」となぜ言えないのだろう。

 丁寧に言おう、失礼のないように言おうとするあまり、必要以上の言葉を重ねておかしな日本語になる。
 言葉は伝わればいいという解釈もある。いやいや文法を守らなければという解釈もある。でも、時代とともに変化もする。では、いったいなにが正しいのか。そもそも正しいとはなにか。聞く側の育った環境や教育にもよる。
 でも、だから数学や物理と違うおもしろさがあるのかもしれない。まあ、高校生のとき物理で3点(名前だけ書けば3点)という驚異的な点数をとったことのある僕が言うことではないのだが。

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