essay

懲りないヤツ

 またか!と言われるかもしれないが、そう、また怪我をした。
 今度は左足首外側の筋肉またはじん帯の激しい損傷。つまりひどい捻挫。そうです、またバスケットのプレー中にやっちゃいました。

 最後のワンプレーだった。残り10秒。リバンドを取ったのか、単にボールをスチールしたのか忘れたが、味方がマイボールにしたのを見た僕は、左サイドを駆け上がった。後ろから少し長めのパスをセンターラインを越えた当たりで受けた。ドリブルでゴールに向かう。しかし戻ってきた敵のプレーヤーが一人、前に立ちふさがった。一回左にフェイクしたあと、右からドリブルで抜こうと左足を踏み出した。その瞬間、もう一人右から別のプレーヤーがディフェンスに入ってきた。全く視界の外から入ってきたため、衝突するような形でそのプレーヤーの足の上に乗ってしまった。左足首がねじれるのが、まるでスローモーションのように目に入る。とっさに極力足に力が加わらないように左側に倒れこんだ。
 が、しかし、ダメだった。激しい痛みが襲う。おもわずうめき声が出る。これはひどいと直感した。シューズと靴下をむりやり脱がしてもらう。くるぶしがこぶし大に腫れ上がっている。
 やっちまったぜぇ・・・
 氷をビニールに入れてもってきてもらう。急いで冷やす。どうにか立つことはできるが、できるだけ早く病院に行って診てもらった方がいい。

 自分の車を運転して近くの順天堂浦安病院の救急へ急いだ。怪我したのは左足。オートマ車だから問題なく運転はできる。
 この病院へは去年も目の怪我をして救急に来たばかりだから、比較的不安はなかった。
 待つこと30分。ようやく診断。まずはレントゲンを撮りましょう。そりゃそうだ。待つこと30分。ようやくレントゲン撮影。待つこと30分。怪我をした時にいちばんドキドキする時間だ。骨折か?ひびか?捻挫か?複雑か?単純か? さて、結果発表!
「澤地さーん、診察室へどうぞ」
 ひっこひっこ(足をひきずって)、ドッキドッキ(顔はひきつって)。
「骨はなんとか大丈夫でしょう。それにしてもやけに腫れてますから、明日もう一度専門医に診てもらってください」
 よっしゃ、骨折はまぬがれたかぁ。おーっ、いい先生だぁ。あなたは名医だよぉ。いかったいかったぁ! とりあえず一安心。とは言え、捻挫の方がやっかいなことだってある。捻挫だってギプスをしなければならないこともある。骨折の方が早く治ることだってある。要は怪我の状態による。油断はできない。
 夜中の12時過ぎ、ようやく病院をあとにして家路を急いだ。

 翌日、家族にバカだのいい年してだの顔が悪いだの、ありがたいお言葉をいただきながら、家の近所の整形病院へ行った。悪い時には悪いことが重なるもので、ちょうど世の中お盆ウィーク。よく行く病院も、前はよく行った病院も、たまに行く病院もみんな休み。ようやく、今まで行ったことのない新しくできた総合病院の整形外科で診てもらった。
 やはり骨は大丈夫で、ひどい捻挫だろうとのこと。骨はレントゲンに映るが、筋肉は映らないから、実際どうなっているのかわからないけど、ギプスまではしないでいいとのこと。サポーターで固定してようすを見てください。ハイっ!ありがとうございます。1ヶ月で治るかもしれないし、半年かかるかもしれないし、それはわかりません。なるほど、がんばります。どうがんばればいいのかわからないけど、がんばります。
 
 さてこの病院、総合病院だからかなり広いし、すべてがシステム化されている。移動の距離は結構ある。しかもありがたいことに整形外科は病院の一番奥、放射線科は二階! 車椅子での移動となった。ひとりで移動したところもあったし、看護士さんに押してもらったところもあったし、いずれにしても始めての経験。
 うーん、なるほどこれは大変。車輪が重いし、曲がるのも一苦労。世の中を違う目線で見ることができたいい経験ではあった。こんないいかげんな人生を送っている僕でも、なにかできることはないかなって思ってしまうわけで。
 
 それから一週間。どうにか足をひきずりながら生活している。腫れもずいぶんひいてはきたが、まだまだ紫色で痛みが走る。右足に比べるとはるかに太っている。こんな足で電車に乗ったり、街を歩いていても、また違うものが見えてくる。小さな段差の大きな重みや、人の親切や冷たさ。でも、こういう気持ちって怪我が治ると忘れちゃうんだよね。それで、また怪我をして思い出したりしてね。懲りないヤツです。
 それにしても、整形外科の受付のおねえさん、かわいかったなぁ・・・懲りないヤツです。足も頭も早く治せっ!

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