essay

テレビアニメの主題歌

 ある日九歳になる息子が、テレビを見ていてボソっとつぶやいた。
「どうして最近のアニメの歌って、内容と関係ない歌ばっかりなの?」
 いかにも! まさしく! その通り! 良く言った!
 しかし、その純粋な息子の疑問に、親父は答えられなかった。
「うーん、そうだねえ、まあ、いろいろあってねえ。ぶつぶつぶつぶつ・・・」

 九歳の息子にとって、「最近のアニメ」の比較となる「昔のアニメ」がいったい何を指しているのかはわからない。しかし「鉄腕アトム」「鉄人28号」「ジャングル大帝レオ」「ウルトラマン」などの有名なクラシックアニメは、当然彼も知っている。繰り返し放送されている「懐かしのアニメ」のような番組でも、衛星放送やケーブルテレビでも、二十年前、三十年前の名作を見ることができる。また「ドラえもん」や「サザエさん」のような長寿番組もあるし、「クレヨンしんちゃん」や「まる子ちゃん」のように、彼らにとっては生まれた時からやっている番組もある。
 おまけに我が息子は親父の趣味のおしつけから、「ルパン三世」の旧シリーズからTVスペシャル、劇場版までをビデオで見せられており、風呂上がりにタオル一枚のセクシーポーズで、「ルパン三世」旧シリーズのオープニングテーマを歌っていたチャーリー・コーセーの気怠い歌い方を真似して喜んでいたりする。従って、九歳の子供とは言え、彼なりの感覚で、昔のアニメと最近のアニメの区別があるのだろう。

 実は僕も「最近のアニメ」の主題歌や挿入歌をいくつか書いている。そしてそのほとんどがアニメの内容とは関係のない歌詞である。もちろん詞の打ち合わせの際には、アニメの内容を説明してもらい、それに沿ったものを作るのだが、それらはどうしてもそのアニメの主題歌でなければならないというほどではないことが多い。時には、あるアーティストに書いたものが、そのまま主題歌として使われてしまうこともある。つまりタイアップである。
「そんな詞は書けません! だいたい最近のテレビアニメの主題歌たるものは・・・」
 なーんて、かっこよく仕事を断れない僕は、ニコニコ営業スマイルをしながら、
「なるほど、いいですねー。おもしろいテーマですねえ」
 とかなんとか言って打ち合わせを済ませ、お仕事いただけるだけでもありがたやモードで、大きな社会の小さな歯車でしかない自分を実感してしまうのだ。あー、哀しい小市民!

 昔は良かった!と言うと、なんだか年寄りくさいのだが、その番組のために作ったテーマソングを、第1回目から最終回の放送まで、当たり前のように繰り返し使っていた頃は、やっぱり良かったと思う。始まる始まるという嬉しさやドキドキがテーマソングと共にやってくるし、何十回と聞いた歌は、もちろんイントロから効果音から歌い方まで覚えてしまうわけで、その感動はいくつになっても忘れないものだ。
 お願いです。大人の都合ではなく、子供たちの心に訴える、口ずさめる、そして記憶に残るテレビアニメの主題歌にして下さい。

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